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燃える男の道


mtg小説その7「ショック」第七話

出てきたカードの解説とかいまさら要らないかもしれないけど最後に付けました。
この結末読めないだろ(ドヤァ)したけどわりと普通のコンボです。



第七話

 ロンダーは俺の撒き得にしっかりと食いついた。ここからが本番だ。
 それまでの俺の指し回しとは完全に異なっていた。負けを相手にプレゼントするなど。無論、負けがくやしくないわけではない。依然として、落とした一戦は、悔しさで俺の奥歯を軋らせている。しかし、その負けを通して次の一戦を、次の次の一戦を見ていられるようになっていた。
 勝負の形態がエンドレス負け選(負けた側が先攻後攻を選択する権利を持つ)になっていることも一要因だが、一戦を越える視座でゲームを判断できるようになっている。
 熱く、そして冷めたこの感覚が、俺のゲームに対する姿勢すら変化させている。
 目前で上機嫌なにやけ面を晒しているロンダーを前にして、自分の脳漿が裏マジックのそれに急速に入れ替わっていくのを確信した。
 
 *

 次の戦いが始まる。先攻を選択した俺に酷く奇妙なものを見るような眼を向けるロンダー。知るか。
 恭しく、真摯な祈りのようにシャッフルし、ドローする。
 この瞬間の胸の高鳴りはマジックに初めて触れたその日から些かも変わらない。そして、幸運を掴んだ時の興奮も。相棒と、そして切り札が揃っている。
 ロンダーはカードを引き、揃え、パチパチシャカシャカし、ノーマリガンを宣言した。互いがマリガンなしであるのを確認した途端、

「先ほどには劣るけど、また唸るマナからのパワープレイでいかせてもらうよ!」

 と吼えた。
 威勢はいい。が、その動きならば、斬って落とすだけ。
 俺は未開地から山を導き、ターンを終える。
 ロンダーは、流石に特定アンコを引けなかったらしく、森を置いて素直にターンエンド。
 ここから、俺の反撃が始まる。

「島をプレイ、2マナから《窯の悪鬼》。ターンエンド。」

「悪鬼か。まぁ線は細いけど、いいカードだね。」
 
 これは2マナ1/2という赤の中でもかなりお粗末なフィジカルの持ち主だ。しかし、面白い能力を持っている。インスタントやソーサリーがコントローラーによって唱えられる度、ターン終了時まで、パワーが3上がるというものだ。この効果はこの環境のある能力と非常に相性がいい。直に披露するぜ。
 ロンダーは俺の相棒を小動物かのように見ている。先ほどの勝負で見えた山、島から、ここまではロンダーにとっても想定内か。だが、この小動物が、どれだけ削るか良く見て、感じるんだな。

 「僕のターン、トップが強い!」

 早速マナ加速をドロー、といったところか。予想通り、沼を置いて《草茂る胸壁》をプレイ。相手もまずまずの立ち上がり。だが、俺の初手には及んじゃあいない!
 追加で山を置き、手札から叩きつけられる《炎の斬りつけ》!哀れ、壁は墓地に吸い込まれていく。

「誘発でパワー4の悪鬼でアタック。ライフは16でいいな。第二メインに《ゴブリンのトンネル掘り》をプレイ。エンドだ。」

 ノータイムで処理された壁に若干うろたえつつも、

「ゴブでアンブロッカブルコンボか、何点削れるか見ものだね!」

 まるで人事の如し。まぁ見てな。その見ものをよ!
 ロンダーは続くターン、森を置き、森、沼から出したマナで2枚目の胸壁をプレイ、ターンを返した。なるほど、揃ってればかなりまずかったな。
 続く俺のターン。壁や落とし子など物の役に立たない、搦め手の始まりだった。
 島をプレイし、それをタップして、悪鬼に《ひずみの一撃》をプレイ。この呪文、対象はターン終了時までブロックされず、またパワーも1追加される。おまけに、反復というキーワード能力のおかげで、次のターンマナを掛けずに再び唱え、ブロック不可とささやかだがパワー修正、そしてなにより悪鬼の能力を誘発させられる。
 このターンはひずみと能力と合わせて悪鬼が5点のライフを削り、ターン終了。
 ゴブリンは、マナもあるし迷彩がてら殴っても良かったが、万一何も考えずロンダーがブロックした挙句、なにかコンバットトリックでも挟もうものなら後の公算がパーなのでお留守番だ。トンネルは後でちゃんと掘らせてやるからな。
 今度はロンダーのターン。ロンダーは、《成長の発作》をプレイして山を戦場に出し、落とし子もポロリと出てくる。手札からも沼をだし、これで見えているだけで沼、沼、山、森、森、胸壁、落とし子で7マナ。今出るマナは3マナだが、次のターンに土地が起きればエルドラージの眷属をプレイしうるレベルに到達している。後攻でこれなのだから恐れ入る。
 しかし、《成長の発作》をプレイする前に、軽く、極々軽く肘を上下させて、手札の端のカードを持ち直した。動かすというより、体を揺すったのにつられたという程度の大きさで肘が3回振られた。普段なら見落とす動きだが、今日はやけに気にかかる。
 続く俺のターンのアップキープ、反復により唱えられた《ひずみの一撃》は、当然悪鬼に。
 悪鬼でアタックに向かう場面で、またロンダーは小さく肘を動かしていた。何かの癖だろうか。しかしアタックも問題なく通り、ロンダーのライフは6点にまで減少した。

「おお、間に合うかなぁ!僕の展開!」

 白々しく言ってのける。しかしトンネル掘りと悪鬼が揃っている状況で平然としているのだから、何かあるだろう。除去か。まぁいい。それも当然のことだ。
 続く第二メインでは、山を置き、島と山を1つずつ残して《戦闘塁壁》をプレイ。ロンダーはにやにやしている。それならトンネル掘りを隠しておいて、奇襲に使えばいいのに、というようなことだろう。生憎、そんなけちな使い道はしないんだよ。この一戦に関して言えばな。
 ロンダーのターン。4マナで《オンドゥの巨人》をプレイ。まだ伸ばすのか!?手札から山までプレイし、マナを余らせながらターン終了。手札は殆ど残っていないが、その中に爆弾が眠っているのは間違いない。
 俺のターンが始まる。なにもなければ、俺の勝利は見えている。ゴブリンが造ったトンネルを悪鬼に潜らせ、アンブロッカブルを付与。さらに手札から《二股の稲妻》をプレイし、本体に2点。悪鬼のアタックが通れば勝ち、なのだが。

「いやぁ、面食らったよ。速いデッキもこの組み合わせだけは、結構いけるのかもね!でも、まっすぐ勝ちってのは、虫が良すぎるよね!」
 
 手札から繰り出されたカードは、案の定、カードを持ち直すようにして触れていた端のカードだった。その正体は、《最後の口づけ》。対象は、当然悪鬼。パワー4点を活かせず、墓地に送られる俺の相棒。挙句ライフは6点に戻される。
 ロンダーの笑みは、最高潮に達しようとしていた。俺のハンドは1枚。次のドローを入れても2枚。2枚と戦場にある戦力で6点削る手段がなければ、手札の爆弾で一気に勝負を決められるという腹なのだろう。いいぜ。そういういつ引いても強い予定調和のパワーカードじゃない。本当の切り札ってのを教えてやる。
 次のロンダーのターン。落とし子も生贄に捧げての9マナ捻出で、《コジレックの職工》をプレイ。墓地からは胸壁が帰ってくる。壁、巨人、そして職工という肉壁に、更にライフ6点という陣容を一気に崩すにはどうすればいい?そう問いたげな顔でふんぞり返るロンダー。自信満々のターンエンドだ。
 ラストターン。俺はドローし、そして、初期手札からあった1枚のアンコモンを戦場に送り出した。
 それは、《ヴァラクートの火猪》だった。1/7であり、トンネルを潜れるサイズでありながら、攻撃時にはワームに匹敵するパワー7になれる。まさにこの状況のためにあるようなカードである。
 流石に、この環境をよく知るプレイヤーなのだろう。猪を見、ゴブリンを見、そして、壁を見て頭を抱えている。ロンダーの用意した堅陣は、一瞬でタップアウトしてまで作り出した砂上の楼閣となったのだ。
 無情なるアンブロッカブルの猪がロンダーのライフを削り、2ゲーム目は、俺のものとなった。
 そして、この勝利は、俺にある能力の開花へと導いた。
 
続く!



反復について

反復/Rebound は、「この呪文が手札から唱えられた場合、解決時にそれをあなたの墓地に置く代わりに、それを追放し、あなたの次のアップキープの開始時に、あなたはこのカードを追放領域からそれのマナ・コストを支払わずに唱えてもよい。」を意味する。

カード紹介

Artisan of Kozilek / コジレックの職工 (9)
クリーチャー — エルドラージ(Eldrazi)
あなたがコジレックの職工を唱えたとき、あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とする。あなたはそれを戦場に戻してもよい。
滅殺2(このクリーチャーが攻撃するたび、防御プレイヤーはパーマネントを2つ生け贄に捧げる。)
10/9

アンコなのに神の如き唱えた誘発を持つ。ゾンビ化が4マナであることを考えると、こいつは5マナ10/9滅殺2ということになる。抱き合わせ商法というレベルではない。


Skittering Invasion / 走り回る侵略 (7)
部族 ソーサリー — エルドラージ(Eldrazi)
無色の0/1のエルドラージ(Eldrazi)・落とし子(Spawn)クリーチャー・トークン5体を戦場に出す。それらは「このクリーチャーを生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに(1)を加える。」を持つ。

重いが、1枚から5つのパーマネントを展開できる優れもの。素直に7マナ出してたら、この次は何もしなくても12マナという神に届き得る呪文。


Skywatcher Adept / 空見張りの達人 (青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) ウィザード(Wizard)
Lvアップ(3)((3):この上にLv(level)カウンターを1個置く。Lvアップはソーサリーとしてのみ行う。)
1/1

Lv1-2:

飛行
2/2

Lv3+:

飛行
4/2

1マナで置けて、レベルアップすればまず《風のドレイク》になれる。4マナ2/2飛行と見ても悪くないし、分割支払いも効く優れもの。除去や到達には弱いが、パワー4まで育てられると1マナのコモン生物なのにフィニッシャーレベル。


Last Kiss / 最後の口づけ (2)(黒)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。最後の口づけはそれに2点のダメージを与え、あなたは2点のライフを得る。

そこそこ軽いしインスタントなのも嬉しい除去。ゲインもないよりはいい。
あまり見目麗しくない人に打たれたくない呪文。


Vendetta / 血の復讐 (黒)
インスタント
黒でないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。それは再生できない。あなたは、そのクリーチャーのタフネスに等しい点数のライフを失う。

メルマスからの再録。ダメージが痛いが、殴られ続けるよりはマシな時、相手が自分より速く死んでくれそうな時には問題ない。エルドラージにはあまり撃ちたくない。


Kiln Fiend / 窯の悪鬼 (1)(赤)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) ビースト(Beast)
あなたがインスタント呪文かソーサリー呪文を唱えるたび、窯の悪鬼はターン終了時まで+3/+0の修整を受ける。
1/2

相棒。
回避能力をつけるひずみとの相性で俺の中で一世を風靡した。
後に赤単スライのメインアタッカーとして俺に見出される。


Goblin Tunneler / ゴブリンのトンネル掘り (1)(赤)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) ならず者(Rogue)
(T):パワーが2以下のクリーチャー1体を対象とする。このターン、それはブロックされない。
1/1

小さくないとトンネルは潜れないらしい。ケツのでかさだけは気にならないとかどんなトンネルだ。


Battle Rampart / 戦闘塁壁 (2)(赤)
クリーチャー — 壁(Wall)
防衛
(T):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで速攻を得る。
1/3

ほぼ壁として機能しない壁。
これもメルマスからの再録組である。


Flame Slash / 炎の斬りつけ (赤)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。炎の斬りつけはそれに4点のダメージを与える。

中盤までのほぼ全ての生物を対処できるナイス除去。
構築でも採用されるレベル。


Valakut Fireboar / ヴァラクートの火猪 (4)(赤)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental) 猪(Boar)
ヴァラクートの火猪が攻撃するたび、ターン終了時までそれのパワーとタフネスを入れ替える。
1/7

両極端な流動石能力の亜種を持つ猪。
この能力とトンネル掘りに蹂躙された苦い記憶が蘇る。


Forked Bolt / 二股の稲妻 (赤)
ソーサリー
1つまたは2つのクリーチャーとプレイヤーの組み合わせを対象とする。二股の稲妻は、それらに2点のダメージを望むように割り振って与える。

エルフを2体焼いたり、1体焼いて本体にもおすそ分けしたり。融通が利く上に軽いナイス火力。


Ondu Giant / オンドゥの巨人 (3)(緑)
クリーチャー — 巨人(Giant) ドルイド(Druid)
オンドゥの巨人が戦場に出たとき、あなたは「あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す」ことを選んでもよい。
2/4

これも詐欺臭い抱き合わせ商法。


Overgrown Battlement / 草茂る胸壁 (1)(緑)
クリーチャー — 壁(Wall)
防衛
(T):あなたがコントロールする防衛を持つクリーチャー1体につき、あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
0/4

《ぶどう棚》だけはこいつに変換された。なぜだ。
これ打ち消すと罠経由でタイタン出された人も多いはず。


Growth Spasm / 成長の発作 (2)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。無色の0/1のエルドラージ(Eldrazi)・落とし子(Spawn)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。それは「このクリーチャーを生け贄に捧げる:あなたのマナ・プールに(1)を加える。」を持つ。

次のターン速やかに2マナ出せることを買われて構築でもよく見たカード。実際強い。


Joraga Treespeaker / ジョラーガの樹語り (緑)
クリーチャー — エルフ(Elf) ドルイド(Druid)
Lvアップ(1)(緑)((1)(緑):この上にLv(level)カウンターを1個置く。Lvアップはソーサリーとしてのみ行う。)
1/1

Lv1-4:

(T):あなたのマナ・プールに(緑)(緑)を加える。
1/2

Lv5+:

あなたがコントロールするエルフ(Elf)は「(T):あなたのマナ・プールに(緑)(緑)を加える。」を持つ。
1/4

これ焼き損ねるとゲームにならなくなるくらいスムーズにマナを伸ばされる。小説にあったとおり、樹語り→レベルアップ→胸壁とかされると泣きたくなった。


Evolving Wilds / 進化する未開地
土地
{T],進化する未開地を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

貧乏デッキのお供。
そうでなくても、ブロック構築なんかでは悪くない。追加のフェッチとか、上陸デッキで採用してた。
by moeru_otoko | 2013-04-02 23:52 | MTG小説

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